経営のヒント

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様々なステージにおける経営に関する情報をお届けします

第4回 適正な「手元現預金残高」の考え方

投稿者:立石 修 2023年7月3日

 

経営相談でよくある質問です。会社の手元現預金残高はどの程度を目安にすれば良いでしょうか。

 

一般的には月商の2か月や3か月分持っておきましょうと書籍で記載されていたり、経営セミナーで言われたりすることが多いようです。あるいは毎月の固定費+返済額の○か月分など一定期間の固定的支出額から算定する言い方もあります。
これらは損益計算書から導いたもので、例えば災害で店舗が被災し営業ができない場合、代表者が病気で入院した場合の売上減少、あるいは大口取引先の破綻など、まさかの緊急事態に備えて会社がどの程度の期間持ちこたえられるかの安心度を測るものと言えます。
例えば手元現預金残高3千万円、固定費+借入金返済/月が3百万円だとすれば10ヵ月は持ちこたえられるということになります。
売上入金が止まるのはせいぜい1か月程度と考えるのか、最悪の場合を6か月から1年以上と考えるのかで、手元現預金残高は経営者のリスクに対する考え方次第ということになります。

 

ただしこの考え方は、会社の規模や業種によって、売上規模、利益率、売上の回収条件、商品の在庫期間や仕入の支払い条件など様々で、すべての会社に当てはめるには無理があります。

 

売上高は損益計算書、現預金残高は貸借対照表の科目になります。
そこで、日々の事業活動の中で「所要運転資金」は「(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形)」で計算され、短期借入金で金融機関から調達したりします。
所要運転資金は売上代金の回収や棚卸商品の販売までに必要な資金ですから、資金繰りを回していくうえで、「所要運転資金」を超える手元現預金残高がなければ、自転車操業に陥り、売上高が下がったりすると、途端に資金繰りに悩まされることになります。
また緊急事態が発生し、営業ができない状態や回収不能、回収に大幅な遅れが生じた場合、金融機関へ借入の申し込みをしますが、通常1か月~2ヶ月程度融資の実行に時間がかかります。このことから手元現預金残高は最低でも「所要運転資金」+「固定的費用2か月(借入調達までの期間分)」は確保しておくことが大切です。

 

適正な手元現預金残高の確保は経営者にとって会社存続のために必要不可欠な課題であり、常にその残高を適切に管理していくことが必要です。
時代の変化に適応できずに売上高の減少、利益の減少で手元資金が減少、常に不足し、経営者が資金繰りに奔走せざるを得ない状況になると、目先の資金に追われ、誤った判断や行動、正しい意思決定ができない危険な状態に陥ります。
経営者は存続に向けて常に時代の変化に即応する革新的な取り組みを進めていくことが必要です。
そのために必要な資金を安定的に確保するために、今後の5年から10年の間にどれだけの利益を計上していくか、経営計画や経営革新事業計画策定のきっかけにしていただきたい、変化が激しく予測困難な現在只今はそんな機会ではないかと考えます。

 


 

第3回 ~コロナ禍で借入金が増えて・・・適切な借入金の考え方~

投稿者:立石 修 2023年6月1日

 

コロナ禍で、銀行借入が多くなり今後の対策についてよく相談を受けるようになりました。
事業者様にとって、適切な借入金額はどの程度のものでしょうか?

 

実態を把握するために、決算書3期分ご用意いただき、以下の3点を検証します。

 

(1)売上を創る仕組み(事業構造)について
(2)利益を生み出す仕組み(業務構造)について
(3)資金の調達・運用の実態(財務構造)について

 

通常、事業拡大や設備投資等にあたり、金融機関からお金を借ります。その借入した金額から、所要運転資金(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形)を引いた金額が返さないといけないお金「要償還債務(実質借入金)」となります。
業種によって違いますが、この要償還債務の金額が、営業キャッシュフロー(経常利益+減価償却-法人税等)の10~15倍以内であれば一般的に「概ね問題のない借入金」といわれています。

 

 

「所要運転資金」=(売掛金+受取手形+棚卸資産)-(買掛金+支払手形)
「要償還債務」=有利子負債(短期借入金、長期借入金etc)-(所要運転資金)
「営業キャッシュフロー」=(経常利益+減価償却-法人税等)
「要償還債務返済年数」=要償還債務÷営業キャッシュフロー
※要償還債務返済年数は「借入金を完済できる年数」を言います。

 

A社の(例)
借入金 平均月商の12か月分、所要運転資金 3か月
要償還債務(借入金)=12ヵ月-3か月=9か月
仮に平均月商1千万だとすれば年商1.2億円、要償還債務(借入金)9千万円 営業キャッシュフローが要償還債務返済年数10年であれば9百万円以上、15年であれば6百万円となります。

 

コロナ禍でこの要償還債務が増えて、また収益性が低下して営業キャッシュフローとのバランスが悪くなってしまった企業様が多くいらっしゃいます。 まずは要償還債務返済年数10~15年を目標に今後の対策を検討します。

 

早めに手を打たれる経営者の方は、メインバンクの支援を受け、 借り方を見直し、要償還債務をさらに長期でまき直して、月々の返済額を軽減、正常化して資金繰りを安定させています。
一方で経営改善が進まず交渉が後手に回り、条件変更を繰り返さざるを得ない事業者さんも増えています。

 

コロナ禍やウクライナ危機、物価上昇、気候変動、大災害など何が起きるかわからない先行き不透明な時代は 少なくとも5年程度の経営(改善)計画を作成し、金融機関と話し合いの場を持ち、いち早く金融機関から前向きな支援をとりつけることが重要です。

 

・・・・次回は適正な「手元現預金残高の考え方」についてお伝えします。

 


 

第2回 N-NETSの無料経営相談会のご報告

投稿者:立石 修 2023年5月24日

 

・今回は昨年10月よりスタートした「N-NETSの無料経営相談会」についてご報告いたします。この経営相談会は新型コロナウイルス感染症等の影響や最低賃金引上げ、エネルギーその他物価上昇への対応といった事業環境変化の影響を受ける地域の中小企業・小規模事業者、NPO法人の方々の課題解決に少しでもお役に立てることを目的に、N-NETSメンバー有志12名で実施しています。

 

 

・令和4年10月からR5年3月まで毎月第3土曜日に6回実施いたしまして、毎回5名の中小企業診断士が応対、相談件数はのべ28件、事業者様数22者の方々のご相談をいただきました。複数回ご利用いただきました事業者様は4者となっています。

 

・相談事業者の方々の組織形態は個人事業者の方が8者、株式会社13者、一般社団法人1社で、業種別内訳では、卸小売業5者、サービス業7者、宿泊業3者、製造3者、飲食業3社、建設業1者とまんべんなく様々な業種の方々にご利用いただきました。

 

・相談テーマは、補助金9件、経営改善7件、経営革新15件、創業5、業務改善3件、資金繰り2件、販路開拓1件、人事労務1件となっていまして、事業所さんの今日的な課題や創業など様々な内容となりました。

 

・毎回アンケートをお願いしていましてその相談後の感想は・・・

 

「広告宣伝の方法を検討していきたい」業務改善の方
「一緒に頑張っていきたい」経営革新の方
「丁寧に教えていただきました」創業支援の方
「専門家の先生のアドバイスは目からうろこでした。次回も活用させていただきたいと思いました」経営改善・業務改善の方
「的確なアドバイスをいただいた。とてもわかりやすく助かりました」創業支援の方
「ご意見参考になりました。また利用させていただきたいと思いました。」小規模事業者持続化補助金申請の方
「夢に近づきました。ありがとうございました。今後も参加したいです」事業再構築補助金の方
「少しでも何か経営の方針・方向を確立しヒントを得たいと持ったので。こういう機会が皆様の有志によって与えられたことに感謝いたします」販路開拓・資金繰り相談の方
など、こちらも勇気が頂けるようなたくさんのご感想をいただきました。

 

・目に見える成果は
(1)新規創業の方3者ともご希望の希望額で必要資金の融資が決定、2月にオープンされた方1者、もうすぐオープンの方2者の方です。
(2)2者の方が事業再構築補助金に採択されています。
(3)経営革新計画の承認1者、同補助金1者が採択されています。

 

令和5年度も毎月第三土曜日、久留米商工会会館205会議室で実施しています。
4月15日は早速4件の相談に対応させていただきました。
これからもすこしでもお役に立てますよう実施してまいりますのでよろしくお願いいたします。

 


 

第1回 SDGs経営のススメ

投稿者:日下部 清 2023年4月13日

 

 

1.SDGsとは

(1)SDGsとは
・SDGsとは、SustainableDevelopmentGoals(持続可能な開発目標)の略で、国連で合意された2030年迄に地球と人類が目指すべき17個の目標と169個の具体的なターゲットを設定しています。このままでは「地球も人類も滅亡する」ということを世界が認め、共通の目標を掲げて人や組織の努力を一つにまとめようとしています。
・地球の温暖化・資源という環境問題のことが話題になることが多いのですが、経済・社会の分野でも具体的な数値目標を掲げて何を取り組むべきかについての指標を表現しています。
・SDGsはヨーロッパを中心に世界的な潮流になっており、日本の国としても全省庁ごとに取り組み指針を設けていますし市町村レベルでも取り組みが広がっています。

 

(2)SDGsの認知度
・広告大手の電通が2022年4月に公表した「SDGsに関する生活者調査」結果によると、SDGsの認知率は86.0%で1年前から30ポイント以上も伸びました。
・環境問題への関心が高く、エコバックやマイボトルの持参、詰め替え商品の購入、フードロス削減などの普及による効果が大きいと思われますが、世の中の半数の人は「SDGs」という名前を知っているだけに過ぎないという状況です。
・「自分も何かしたい」など、行動まで意識している回答は3割に満たないのですが、学生など15~24歳のZ世代は男女ともSDGsに関して「内容まで含めて知っているという人たちが」過半数に達しています。

 

2.企業が.SDGSに取り組むメリットとは?

(1)企業経営へ及ぼす影響
・企業としてSDGsに取り組むことは、企業経営にとって、大きなメリットになる時代になってきています。
  a.環境面に関して
  ①電気・ガスなどのエネルギーや水の使用量削減、②資源や廃棄物の使用量削減と再利用、
  ③温室効果ガス排出の削減、
  b.社会に関して
  ①地域の皆様から愛される企業になる、②企業イメージ・信用度の向上、③.経営の方向性を正すことができる
  c.経済面に関して
  ①イノベーション/新商品・新規事業開発力の向上、②売上・利益の向上、③コスト削減
  d.従業員に関して
  ①社員のやる気向上、②会社へのロイヤリティやモラル意識の向上、③人材不足の解消

 

(2)大企業での浸透度はほぼ100%に達しています。
・今迄のように競争が経済価値のみで行われる市場システムでは、経済活動の活発になればなるほど地球環境や社会への負荷が増大して限界へと達してしまうという考え方が一般的になってきています。
・それを避けるために、SDGsの目標は「持続可能な世界」を前提として、「経済価値」と「社会価値」を両立させる、すなわち、「企業が儲けること」と「環境や社会がよくなる事」を両立させる事です。
・特に若い人達からは、大企業が取り組みに消極的であれば「社会の要請」に応えていないと見なされてきて就職人気が低くなるなど、SDGsがビジネスにもたらす力が広く認識されており、具体的な取組を行っている企業が急速に増えてきています。
・「SDGs への関与」と「企業の持続可能性」は、今後一層、密接な関係を持つようになるだろうと考えられています。

 

3.中小企業がSDGs経営に取り組む意義

(1)市場の変化が進んでいます。
・お客様や取引先が変わり始めている
・投資家や従業員の意識も変化している
・社会貢献型のESG投資の標準化が進んでいる
・SDGsに関係する環境面での規制が強まってきている。
・ビジネスを通して社会や環境に良い影響を与えることが商売繁盛につながる時代が到来しています。
・企業が社会や環境にとって良い影響を与えていることを考えて商売をすると、売上や成長を高めることができるだろうと考える人が多くなってきているのです。

 

(2)中小企業にとってもビジネスチャンス
・「値段と質がほぼ同じなら、お客さんは絶対に社会や環境に良い方を選ぶ」のが普通であり、今の時代は、目に見えない社会に対する信用や共感という財産こそが企業にとっての強力な競争優位性を高めています。
・小さな会社では「経営が苦しいから新たなことを考える余裕がない」と感じているかもしれませんが、経営が苦しいからこそ、小手先の商売のやり方を変えることではなく、将来にわたって会社をさせていくための道筋を見出す必要があります。
・小さな企業が値引き合戦をすることもなく会社を成長させる方法は無いか?と考える時にSDGs で示された目標を取り入れて我社にもできることとして取り組むことは、大きなビジネスチャンスをつかむ可能性を秘めています。企業にとって SDGs は、単なるコストではなく、「宝の山」になり得るものです。
・それは長期的には、人々と社会に必要とされる会社であり続けるために芯を強める事業計画を作成することに他なりません。2030年以降に生き残るための取組要件だと捉えて事業計画に盛り込む必要があると思います。

 

4. 中小企業がSDGsに取り組むための支援

(1)「福岡県SDGs登録制度」登録事業者募集について
福岡県では県内のSDGsに積極的に取り組む企業や団体を県が広く公表し、SDGsへの貢献を「見える化」する「福岡県SDGs登録制度」の登録事業者を募集しています。
① <登録の対象>は、県内に事業所などを置く法人その他の団体、個人事業主
② <登録の要件>は、以下の2つの要件を満たすことです。
●SDGs達成に向け具体的な取組を実施している(または1年以内に実施する)こと
●SDGs達成に向けた取組方針などを宣言していること
③ <登録事業者に対する支援>として以下のような特典を受けることができます。
●県ホームページで取組を紹介、●県のオリジナルロゴマークの使用、●競争入札参加資格審査における加点対象になる、●ふくおか県政推進サポート資金の活用、●商工団体や金融機関による伴走支援

 

詳しくは、「福岡県SDGs登録制度について」の下記サイトをご覧ください。
https://www.pref.fukuoka.lg.jp/contents/sdgs-touroku.html

 

(2)中小企業がSDGsに取り組む上では、以下のようなことに気を付けて取り組むことが大切です。
①経営トップが積極的に関わること
②最初から理想を求めすぎて、非常に高い目標設定を行い、負担が大きくなることは避ける。
③社員の皆様のモチベーションを下げないためにも、「SDGsの活動に取り組む意味」「SDGsに取り組むことで得られる効果」を伝え続け、納得していただきながら取り組むこと

 

(3) NPO経営支援ネットワークでは、SDGsに取り組む中小企業者を支援します。
・NPO経営支援ネットワークでは、中小企業に成長のための事業計画つくりをアドバイスしていますが、ぜひSDGsの視点を取り入れた事業計画を作成して欲しいと考えています。
・事業計画作成に対しては、n-ネッツの中小企業診断士が応援致しますので。ぜひ積極的に挑戦して頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

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