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第18回 「顧客価値」を見直しながらイノベーションの企画を考える


2024年06月22日

投稿者:日下部 清

1.消費者の価値観の変化

「モノづくりからコトづくり」へと言われるように、消費者の価値感が、「商品・製品の価値」から「経験・体験の価値」へと変化してきています。
1980年代位までは大量生産・大量消費が主役でいわば「モノ消費」の時代でしたが、バブルがはじけて2000年位以降からは商品やサービスを利用した時に得られる体験価値・情緒的価値が大切にされる「コト消費」へと変化してきました。
「女子会」「オフ会」などに参加して「特別な体験や人間関係を深める」ことを大切にするようになってきました。
更に2011年の東北大震災や最近の新型コロナウイルスによる経済規制など非常に大きな試練を経験してきた以降では、自分自身にとっての特別な「意味」を求めるようになってきています。
生活者が「健康維持」「ワークライフバランス」「ボランティア参加」「環境保全」のような生活者にとっての意味のある価値を重要視するようになってきて、今は「イミ消費」の時代へ変化してきていると言われています。



2.サービスについての捉え方の変化

企業も顧客が求める価値観の変化に合わせてサービス提供の形や範囲を大きく変化させてきました。
日本のGDPに占める広義のサービス産業の占める割合は7割を超えるようになり、公的なサービスも拡大し続けています。
業種を問わず、企業の提供するビジネスの形が急速に「モノからサービス中心」へ「ハードからソフト中心」へとシフトしています。

従来のビジネス、特に製造業においては「製品」と「サービス」は切り離して考えられてきました。
多くの場合「サービス」は、モノを提供した後の付随的なものとして小さく捉えられていました。
また、消費者は「商品」や「サービス」を提供した時の「交換価値」としてお金を支払うものと捉えてていました。
しかし、製造業のサービス提供の考え方も「モノを作って売るだけでなく、そのモノを介して生まれる新しい経験・価値を提供する」ことを重要視するように変化してきています。
例えば、クルマや家電、スマホなどは商品の「機能性」や「デザイン性」と共に、購入者が長く利用していく上での「継続的な利用メリット」や「コンプライアンス」「エシカル(倫理的)消費」など社会的影響も含めて総合的な価値が評価されるようになってきています。

企業主体での「製品・商品をつくり売ること」と「サービスを提供すること」を隔てていた壁は取り払われて、「顧客が利用した以降の体験価値」を重要視するような、顧客を中心に置いた総合サービス提供のビジネスモデルへと変化しています。
商品自体の評価に加えて購入後のアフターフォロー体制の充実など、「商品とサービスを組み合わせる」総合的なサービスで競争しようとしています。

「商品とサービスを組み合わせる」形のサービス設計では以下のような価値提供の考え方が重視されてきています。

「サービス・ドミナント・ロジック」の考え方

(1)商品やサービスを販売した時点だけではなく、顧客が使用した時点以降の継続的な体験価値も重要視する。
(2)顧客の感じる価値は個々の顧客の状態によって異なることを踏まえたうえで、一人一人に柔軟に細やかに対応する。
(3)企業と顧客がコミュニケーションを取りながら協力しながら一緒に価値を共有して継続的に高めていく。




3.インターネット時代の新たなビジネスチャンス

インターネットとスマートフォン、SNSの出現は、社会の構造を完全に変えてしまいました。
規模の大小や距離的な遠隔さも問わずに生産と消費の壁を低くすることが出来るようになり、全ての企業はインターネットを通じて直接顧客とコミュニケーションをとってサービスを提供できるようになってきています。
メーカーは、ユーザーがサービスや製品の使用で得られる体験を重視したUX(ユーザーエクスペリエンス)という考え方を重視して商品開発を進めています。
ECサイトでは
、 「欲しい商品を見つけやすい」
「サイトの機能を理解しやすい」
「サイトのデザインがオシャレで好ましい」
「カスタマーサポートの対応が早くて親切」
など顧客の体験価値を重視します。

ユーザーが参加しやすいようなサブスクリプションサービス・シェアリングサービスやクラウドファンディングサービスも一般的なものになってきています。
遠く離れた顧客でもオンライン会議等を活用して一人一人のお客様の要望に合わせたコミュニケーションとサービス提供ができるようになっています。

また、創作活動や表現活動といえばこれまでは一部の人にしかできませんでしたが、スマートフォンとパソコンさえあれば自分の創造力を活用して誰にでもできるようになってきています。
小規模であっても新しい形のサービスビジネスも起こしやすくなってきました。
身近な人たちや地域の社会課題に気づいて、周囲の人たちに自分ならではの事業やサービスを提供することがやりやすくなっており、新規事業に挑戦される人たちも大変多くなっています。
今まではビジネスを経験したことがない人でも新しいマーケットも見出しやすくなり、小規模であっても新しい商品やサービスを提供するビジネスも起こしやすくなってきました。
自分の特技を活かして、身近な人たちや地域の社会課題に気づいて周囲の人たちに自分ならではのサービスを提供することがやりやすくなっており、新規事業に挑戦される人たちも大変多くなっています。

4.「顧客価値」を見直しながら、イノベーションの企画を考える

先行きの見通しが難しい時代の中で成長していく為には、細かに顧客ニーズの変化をとらえて自分の頭で考えて、顧客を感動させるような商品やサービスを提供すること、が最も重要になると思います。
前述していますような「サービス中心のビジネスモデル」、即ち身近な人達の細かな要望に合わせて小回りを利かせたサービスを提供していくビジネスの形は、本来的に地域の中小企業が最も得意とするところだと思います。

自社の新しい商品・サービスの開発を考える前に、顧客価値の視点から今までの商品・サービスについて見直しましょう。
利用者の行動をよく観察して潜在ニーズも探索しながら、「顧客にどのような価値を提供できるのか?」を深く考え自社の強みを活かしたサービスの可能性を検討していきましょう。
自社のやっている事業の内容や特徴を深く掘り下げて、「顧客が欲している体験や経験は何か?」「自分も顧客も気づいていない潜在的なニーズは無いか?」「どんな価値を顧客と共有できるか?」をじっくりと考えてみながら、新規事業の糸口を見つけていって頂きたいと思います。

以下のような問いかけをしてみることで、「顧客価値」についての気づきが深まるのではないかと思います。

Q1.現在の商品・サービスの強みは何か?
Q2.同業他社のサービス・商品の何が違うのか?
Q3.なぜこの商品・サービスを提供してきたのか?
Q4.我社の社会的な価値はどこにあるのか?
Q5.市場の変化に対応し、これまでの商品をどのように変化させて行くべきか?
Q6.新しいサービス・商品をどういう人に提供していきたいか?
Q7.新しいサービス・商品を提供して、どのようなメッセージを届けたいか?
Q8.これまで培ってきたノウハウ・強みをどこに活かすことが出来るか?
Q9.新しいサービス・商品を提供していく場合、ライバルになるのはどこか?
Q10.新サービスを拡大して提供していく上で活用できるIT技術やサービスにはどのようなものがあるか?

目の前にある自分自身の経営資源を自分なりに活かして、自分らしく表現できるビジネスの形をイメージしていく事が大切です。
自社のヒト・モノ・カネ・ノウハウなどの経営資源、そして自分自身の好きなことや成し遂げたいことを考え抜き、それを自分自身で納得のいくようなビジネスとし創出していただきたいと思います。

ただ、中小企業者が自分だけで自社の強みや社会的価値について深く掘り下げていくのは容易ではありません。
誰でも長く事業を続けていくほど、「物の見方・考え方」が固定化されてしまうことは避けられないからです。

私達中小企業診断士の役割は、イノベーションの事業企画を考えておられる事業者に対して以下のような問いかけを行い、相互の会話の中からを通じて事業者の気づきを促して創出を支援していくことだと考えています。
・自社の独自の魅力、特徴は何か?
・自社が持っている知識や経験は何か?新しい事業にどのように活用できるか?
・自社が新しい取組を行うに当たって、協力や支援を期待できる人脈や取引関係はどのようなものか?
など




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