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第33回 経営を見える化する「ローカルベンチマーク」とは?


2025年06月25日

投稿者:野上 育彦

中小企業の経営者の皆様にとって、日々の業務に追われる中で「自社の経営状況を客観的に把握する」ことは簡単ではありません。
しかし、経営の現状を正しく理解することが、持続的な成長や経営改善の第一歩になります。

そこで活用をお勧めしたいのが、「ローカルベンチマーク(略してロカベン)」というツールです。
これは経済産業省が提供する企業の健康診断のようなもので、自社の強みや課題を「見える化」するための無料の経営支援ツールです。

ローカルベンチマークとは?

ローカルベンチマークとは、財務情報と非財務情報をもとに、企業の現状を多面的に把握することを目的としたフレームワークです。
名前に「ローカル」とあるように、全国の中小企業の中でも、特に地域に根差した企業を対象に、地域企業が付加価値を生み出し、雇用を創り続けていかなければならないという問題意識から開発されたものです。
「地域の経済・産業の現状と見通しの把握」、「個別企業の経営力評価と経営改善に向けた対話」から構成されています。
一般的に「ロカベン」というと対話ツールの認識で、財務情報と非財務情報で構成されます。



ツールの内容:6つの財務指標とヒアリングシート(非財務情報)

ローカルベンチマークは、以下の2つの要素で構成されています。
① 6つの財務指標

企業の財務的な健康状態を確認するために、以下の6つの指標が用いられます。

1. 売上高増加率:成長性
2. 営業利益率:本業のもうけ
3. 労働生産性:従業員1人当たり営業利益
4. EBITDA有利子負債倍率:借入金の返済能力
5. 営業運転資本回転期間:仕入から販売、回収までの資金の循環期間
6. 自己資本比率:財務安全性

これらの指標を過去の実績や同業他社と比較することで、自社の財務的な強み・弱みが明らかになります。

② ヒアリングシート(非財務情報)

もうひとつの柱は、「ヒアリングシート」と呼ばれる非財務情報で、ロカベンの特徴はこちらになります。
「業務フロー」、「商流」、「4つの視点」に分かれており、これらを明らかにしたうえで、財務情報との関連を認識します。

「業務フロー」では、企業が提供している製品・商品・サービスが企業の中でどのようなプロセスを経て提供されているか、各業務の中でどのような工夫やこだわりがあるのかを理解し、企業の強みやその基となるポイントを把握します。
また企業が提供する製品等が顧客にどのような価値を提供しているのかについても明らかにします。

「商流」では、企業がどのようにして商売を成立させているかを取引関係から把握し、仕入先や協力先を選んでいる理由、得意先やエンドユーザーから選ばれている理由を理解します。

「4つの視点」では、「経営者」、「事業」、「企業を取り巻く環境・関係者」「内部管理体制」から経営全般を俯瞰します。

ロカベンの非財務(業務フロー、商流、4つの視点)と財務分析結果を総合し、現状を認識したうえで、「将来目標」を明らかにし、そのギャップを埋めるための「課題」と課題を解消するための「対応策」を4つの視点シートの下にまとめます。

このシートは経営者自身で記入することもできますが、経営者一人よりも従業員と一緒に、更に社外の専門家と一緒にというように、回数を重ねたり、一緒に考える参加者が増えると、考えの幅が広がります。
これにより今まで気づかなかった本当の自社の姿がはっきりと見えてきます。
ロカベンは「定性的な診断書」であり、数字には表れない自社の特徴や可能性を見つけ出すことができます。

ローカルベンチマークの活用メリット

1. 自社の現状を整理できる

ロカベンを使うことで、自社の経営状態を「数値」と「言葉」で客観的に整理できます。強みや課題が明確になることで、経営の方向性が見えやすくなります。

2. 金融機関や支援機関との対話がしやすくなる

事業計画の策定や資金調達の際に、ロカベンの内容を共有すれば、相手に自社の状況をわかりやすく伝えられます。金融機関からの信頼を得るきっかけにもなります。

3. 経営改善の道筋が立てやすい

課題が整理されることで、「どこをどう改善すべきか」が明確になります。支援機関の助けを借りながら、経営改善計画の立案にもつながります。

4. 無料で使える・手間も少ない

専門的なツールのように見えますが、フォーマットは比較的シンプルで、Excelシートに入力するだけで完結します。経済産業省のホームページから無料でダウンロード可能です。

どんな企業に向いている?

ローカルベンチマークは、以下のような企業に特におすすめです。

• 自社の現状を把握したいが、何から手をつければいいか分からない
• 金融機関との対話の材料がほしい
• 経営改善計画を考えているが、課題の整理が難しい
• 第三者の意見を取り入れながら、冷静に現状を見つめたい

もちろん、業種や業歴にかかわらず、どんな企業でも活用可能です。

最後に:ロカベンは「経営の鏡」

ローカルベンチマークは、経営者が自社を見つめ直す「鏡」のような存在です。
数字だけでは見えない、企業のポテンシャルやリスクが見えてくることで、次の一手が打ちやすくなります。
経営において最も大切なことは、変化に気づき、適切に対応していくこと。
その出発点として、まずはローカルベンチマークで自社の「現在地」を確認してみてはいかがでしょうか?




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