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第17回 戦略的人材採用のコツ


2024年06月13日

投稿者:梅﨑 実

『採用活動を始める前に、絶対に検討すべきこと』

「人の問題」、頭が痛いですよね。
多くの経営者の方が、採用や教育、離職など「人の問題」で頭を悩ませ、心を痛めています。
私自身、調剤薬局を経営していて、何度も人の問題に直面しました。
薬剤師が採用できない。
採用してもすぐやめてしまうなんてことはしょっちゅうで・・・。
今後、働き手が不足していく中で、人の問題はますます重くなっていきます。
そこで今回は私の失敗談や経験談を交えながら、人材採用力を高める工夫についてお話します。

1.人材採用 よくある失敗

人材採用に頭を悩ませている経営者の方は本当に多く、日ごろの経営相談の中でも、しばしば採用についてのご相談をいただきます。

採用に苦労している方には、いくつか共通点があります。
特にこんな採用をしている企業は、採用に苦労していることが多いようです。

□人が足りないから、不足している人数を補充する
□コストをかけずに採用しようとする
□手間や労力をかけずに採用しようとする
□経営陣が採用に関与せず、部下任せにしている
□入社後の働き方などを明確にしないまま採用しようとしている

その結果、なかなか人が集まらなかったり、自社に合う人を採用できなかったりする。
人が足りないから、とりあえず面接に来た人のなかから少しでも良さそうな人を採用するけど、結局長続きしない。
採用コストは無駄になる。採用してもすぐ辞めてしまうから、新人教育を担当する社員が疲弊したり、モチベーションが下がる。
すぐ人が辞めてしまうので、社内の雰囲気も悪化してしまう。
社内の雰囲気が悪いので、ますます人が集まらなくなり悪循環に・・・。
こんな状況になると、本当に胃が痛くなりますね。

実はこれらの問題はすべて、私が実際に経験したことです。
調剤薬局業界はずっと深刻な薬剤師不足が続いていました。
薬剤師がいなければ事業を続けられないので、薬剤師の確保は経営陣にとって至上命題です。
それだけに、採用には力を入れていたのですが、なかなかうまくいかず上記のような状況に陥りました。
いつも社内の雰囲気が重苦しく、私も出社するのが嫌だったのを覚えています。

その後、採用に関する考え方を変えたことで、薬剤師や事務員を複数名確保することができたうえ、私が調剤事業を離れるまで離職者はゼロでした。

どのように考え方を変えたことで採用できるようになったのか。
それはこんなことでした。

2.戦略に基づく採用が成功する

そもそも、採用がうまくいかない原因は「人が足りないから、不足している人数を補充する」、言い換えれば、従業員の頭数をそろえるために採用してしまうことです。

確かに、いくら良い商品・サービスがあっても、それを生産し、販売する人員がいなければビジネスは立ち行きません。
ですから必要な人員数を揃えたいという気持ちは分かりますし、それ自体が悪いわけではありません。
問題は、「戦略」に基づいて採用せず、数だけを揃えようとしていることです。

戦略とは、「目標や目的を達成するためのシナリオ」です。

・自社の将来を見据え、どんな人材が必要なのか。
・ビジョン実現のためにどんなスキルや経験、知見が必要なのか。
・その人材を採用するために、どんな条件を用意しなければならないのか。
・不足しているスキルや能力を、どのように育成していくのか。

このようなことを検討し、自社が「どうしても欲しい!」人材像を明確にしておかなければ、満足できる人材を採用することはできません。

必要な人材像が曖昧なまま採用してしまうと、企業と人材の考えがマッチしなくなります。ミスマッチのまま入社してしまうので
「こんな人だとは思わなかった」
「こんな仕事はしたくない」
「こんな会社では働けない」
など、お互いに不満をためることになり、短期の離職に繋がります。
これではお互いに不幸ですよね。

ですから、採用に当たっては、まず

・近い将来、自社がどこを目指すのか。どんな状態になっていたいのか
・そのためにどんな人材が必要なのか
・その人材を獲得するために、どんな条件を用意すべきなのか
・入社後の教育等をどうするのか

などを検討しておく必要があります。
私も、何度も採用に失敗した経験から、上記の内容を検討しました。

当時の薬局業界は在宅医療への取り組みが求められており、当社でも在宅医療に力を注ぎたいと考えていました。
また、地域医療への貢献も求められていたので、地域住民の健康づくりにも注力したいと考えていました。

そこで必要な人材像として

「在宅医療や地域貢献など、今の医療業界の動向を把握・理解していること」

「患者さんとのコミュニケーションがしっかりできること」

「処方箋薬を提供するだけでなく、一般用医薬品の販売や健康情報の提供、住民向けの講演会など幅広い業務に積極的に取り組めること」

などを考えました。
また、そのような人材が入社したくなるよう待遇面も検討しました。

人材像が明確になった分、マッチする人材に出会うまでには一定の時間がかかりました。
人材不足の状態が続くのは苦しかったのですが、採用してもすぐ辞められてしまう状態が続くよりも、精神的にも経営的にもずいぶん楽になりました。

上記の条件に基づいて、数カ月間採用活動続けた結果、求める人材にぴったり会う人と出会うことができました。
さらに入社してもらうまでに、そこからもう1年かかりました。
1年間、その人材を口説き続け、入社してくれた時は本当にうれしかったのを覚えています。
その人材は入社後、会社にとって欠かせない大黒柱となり。事業を支え続けてくれました。
彼なしでは在宅医療や地域貢献に取り組むことはできませんでしたから、ビジョンに会う人を採用できたのは本当に大きな力になりました。

採用に際しては。自社のビジョンを検討し、求める人材像を明確にすることが欠かせません。
ビジョンを明確にするには、手間も時間もかかります。
日々の業務が忙しいと、将来の戦略作りをついおろそかにしてしまいがちです。
しかし戦略に基づかない採用は、企業側も人材側も不幸な結果になりやすいものです。

どんなに素晴らしい事業でも、それを実現する人材がいなければ絵に描いた餅です。
5年先、10年先を見据え「こんな人と一緒に事業をしたい!」と思えるような人材像を明らかにしてから、採用活動をするようにしてくださいね!




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