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第20回 集客部門と収益部門


2024年07月20日

投稿者:今井 武史

先般、創業塾に参加してきた。もちろん、講師として、である。
年に2~3度、創業のためのセミナー等のお手伝いをさせていただいているが、たまに、「よく考えてビジネスプランをねっているな」と感心させられる事例もある。
集客の手法と、収益をとるための手法を両立てで考えてあるのだ。
多くの創業希望者は、すべての商品・メニューで万遍なく利益をとろうとする。メリハリがないのだ。

下の写真は筆者が街中で撮影したものである。



左は博多三氣、「替え玉10円」とかなりインパクトのある価格設定である。
ラーメン本体は最もスタンダードな「とんこつラーメン」で650円である。
右は24時間営業の博多ラーメンはかたや。ラーメンは290円、こちらは1杯目のラーメンの価格が衝撃的である。替え玉は1玉130円である。
味の好みは別として、安く満腹になりたいのであれば、どちらに行く方が良いだろうか。
替え玉2玉以内であれば「はかたや」、4玉以上ならば「三気」ということになる(3玉の場合、どちらも680円になる)
替え玉3玉という分かれ目が適切か否かは、一旦置いておいて、冷静に計算するとこのようになるのではあるが、消費者は常に冷静に、合理的に判断するわけではない。
よって、このような値付けでのインパクトも効果的に機能するのである。
商いにおいて何で集客するか、何で収益を上げるかということを戦略的に考えていくことは極めて重要なのである。

マーケティングでは有名な話で、「ジレットモデル」というものがある。

「ジレットモデル」とは、本体を無料、または低価格で提供し、付属する消耗品の部分を継続的に販売するビジネスモデルである。
ジレットは、アメリカのプロクター・アンド・ギャンブル社が持つ髭剃用剃刀のブランド。
そのジレットの創業者(当時はP&Gに買収される前の独立した会社)キング・ジレットが、使い捨て用の剃刀の場合、本体を購入すれば、継続的に替え刃を買ってもらえることを思いつき、本体を無料で配布したとのこと。
本体を使わなければもったいないという心理から、他の替え刃より高いにも関わらず、ジレットの替え刃は売れ続けたのだという。

私の得意とするスーパーマーケットでも同様のことがいえる。
具体的な詳細な内容は言えないが、基本的には野菜と加工食品を低粗利率にし、他の部門で利益を稼ぐのである。
理由は単純で食卓での使用頻度が高いためである。
1日の食事で肉や魚は食べない日も発生するが、野菜を全く口にしない日があるご家庭はかなり少ないだろう。
そして、加工食品はカテゴリーの幅が広く、基礎調味料や缶詰、カレーやシチューのルウ、インスタント麺や飲料、乾麺などがそれにあたる。
この両部門を併せると、店全体の売上の凡そ20%程度のシェアを占めるであろう。このことが重要である。

ドロシーレーンの法則というものがある。

(1)100品目中18%の商品を安くすると、85%のお客様が安いと感じる
(2)100品目中30%の商品を安くすると、95%のお客様が安いと感じる
(3)100品目中48%の商品を安くすると、ほぼ100%のお客様が安いと感じる
と、いうものである。

つまり、野菜と加工食品を競合店よりも安くすると、85%の顧客は自店の品揃え全体を安く感じるということになる。
野菜と加工食品を集客部門とし、その他の部門で収益を稼ぐことを意識する。
その際に、全体の利益を圧迫しないように相乗積などをつかって、全体の収益をシミュレーションした後、PDCAを回していくのである。

日々、経営支援を行う中で、しっかりと作戦を考えて、経営を行っている企業が意外と少ないことに気付く。
経営者の仕事は肉体的に汗をかくことではない。脳みそに汗をかくことである。




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