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第21回 小さなM&Aの大きな効果


2024年09月09日

投稿者:野上 育彦

2024年5月、福岡県久留米市で食品卸売業の事業譲渡が行われ、私は譲渡企業側のアドバイザーとして支援しました。
久留米商工会議所やNPO経営支援ネットワークの協力により2つの企業が出会うことがなければ、途絶えてしまったかもしれない事業ですが、事業存続・雇用の維持だけでなく、譲受企業にとっても思わぬメリットがありました。
事業譲渡後3カ月が経過。
譲渡企業は社長が店舗に出向き得意先への顔つなぎを行うとともに、仕入先の引き継ぎや事務処理のサポートを実施、譲受企業が単独で事業を行える状態に近づいてきました。
以下、譲渡企業をA社、譲受企業をB社として、M&Aの概要を紹介します。

A社は複数の事業を営み、経営者の高齢化もあって、事業ごとの収益性を基に事業の選択と集中を検討していました。
B社は大型店のテナントとして食品を製造し個人顧客に販売しており、コロナ禍の影響もあり、事業の再構築を模索していました。



事業を引き継ぐ検討を始めた当初、B社は食品卸売事業を手に入れることで、自社が製造する商品用の材料が卸価格で仕入れられる価格メリットを期待していました。
しかし、実際に事業を行うと、自社商品の販路拡大のメリットの方が上回っているそうです。
B社はこれまで大型店に来店する個人を顧客とするBtoCビジネスを行っていました。
譲り受けた食品卸売業の顧客は食品小売業が中心であり、BtoBビジネスへと事業領域が拡大しました。
BtoBではBtoCよりも販売価格は若干低く設定するものの、業務用として販売数量は大幅に増加します。

M&Aの成否の判断基準としては、事業の再現性と相乗効果があります。
まずは引き継いだ事業をそれまで同様に実施できる再現性は最低限確保したいところ。
そのうえで2つの企業(事業)が一緒になることで相乗効果が生まれることを期待します。

今回のケースでは、A社の協力により安定的な顧客基盤と仕入先、人員体制を確保することで事業の再現性を維持しつつ、BtoB販路の獲得という相乗効果を得ることができました。

事業譲渡の舞台となったA社の食品卸売業の店頭には、B社が製造販売するものと同種の商品が格安価格(半額以下)で並んでいます。
B社の社長は、価格差が大きすぎ、引き継いだ食品卸売業の店頭で自社商品を販売するのは困難と考えていました。
しかし、実際に自社商品を店頭に並べ、試食してもらうと、予想しなかった反響があり、想定外の売上にB社の社長も驚いています。
価格差以上の品質・味の裏付けがあるからこそ成立したと言えますが、M&Aによる相乗効果が生まれました。

中小企業庁ホームページの「事業承継を知る」によると、休廃業・解散件数はコロナ禍の影響もあり増加傾向、年間5万件弱の水準で高止まりしています。
また、廃業理由で最も多いのが、「誰かに継いでもらいたいと思っていない」次いで「事業に将来性がない」ですが、約3割の経営者が、後継者が見つからないため、やむを得ず廃業している状況です。



今回のM&Aは会社丸ごと譲渡ではなく、会社の一部事業の譲渡でした。
譲渡企業にとって継続が難しいと判断される事業であっても、他の企業にとっては単独の事業として魅力的であったり、既存事業と組み合わせて相乗効果が期待できるなどの判断により、引き継ぎが行われるケースは多く存在します。

会社や事業の継続についてのお悩みは、NPO経営支援ネットワークにご相談ください。




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