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第24回 マーケティングにおけるAI活用:ペルソナ分析からアイディア発想


2024年11月06日

投稿者:馬郡 明弘



1. はじめに

マーケティングの世界でAIの活用が急速に進んでいます。
特に、効果的なマーケティング戦略の立案に欠かせないペルソナ分析において、AIの活用は新たな可能性を開いています。
本記事では、AIを活用したペルソナ分析の実践例を、実際のパン屋の商品開発事例とともにご紹介します。

2. マーケティングの基本

(ア) マーケティングとは

マーケティングとは、一般的に"売れる仕組み"を作ることと説明されます。
しかし、その本質は「想定したお客様のニーズに、限られたリソースを有効活用して応える」ことにあります。
つまり、ターゲットとなる顧客のニーズを的確に把握し、それに応える商品やサービスを効率的に提供することが重要になります。

(イ) ペルソナ分析の重要性

ターゲット消費者の分析において、最も重要なツールの一つが“ペルソナ分析”です。
これは、架空の顧客像を作成し、その人物をつぶさに創造できるように描き出します。その行動パターンからニーズ(欲求)を探る手法です。

(ウ) 主なメリット

・具体的な顧客像の把握により、商品開発の方向性が明確になる
・チーム内での顧客イメージの共有が容易になる
・マーケティング施策の的確な立案が可能になる
・顧客志向の視点を常に維持できる

3 AIを使ったペルソナ分析

(ア) 従来のペルソナ分析の課題

従来のペルソナ分析では、以下のような課題がありました。

・新聞、雑誌、インタビュー、ネット検索等、多様な情報源からのデータ収集に多大な労力が必要
・分析に時間がかかり、市場の変化に迅速に対応できない
・分析者の主観的バイアスが入りやすい
・一度作成したペルソナの更新が困難

(イ) AI活用による革新

AIの活用により、これらの課題を解決できます。

・データ収集・分析の自動化による時間短縮、効率化
・リアルタイムデータの活用による最新トレンドの反映
・客観的なデータに基づく分析
・多角的な視点からの分析が可能

特筆すべき点として、AIには「壁打ち」と呼ばれる機能があります。
例えば、「Z世代の趣味・嗜好にはどのようなものがあるでしょう?」といった質問に対して、具体的な回答を返してくれます。
1人で考えるより複数人で議論するような多様な視点を得られます。

4 実践例:AI活用のペルソナ分析

ケーススタディ:20代女性向けパン屋の展開を想定したAIの活用方法を取り上げてみます。

(ア) AI検索エンジンの活用

具体的なツールのひとつとして、「Genspark(ジェンスパーク)」というAIサービスを活用します。
アクセスは以下のURLから可能です。
https://www.genspark.ai

以下の手順で分析を行っていきます。

① サービスへのサインアップ
② ペルソナ作成のためのプロンプト入力

青いところに質問を入力します。



プロンプト入力例

「日本人の九州(福岡県)に住む、20代〜30代女性のペルソナを、人口統計軸、ライフスタイル軸、心理軸で生成してください。」

(イ) 生成されたペルソナの詳細

1~2分待てば下記のようにペルソナ像を作成してくれます。

① 人口統計軸

・福岡在住の20-30代女性
・大学卒業後に就職
・都市部(特に福岡市)での生活
・独身または未婚が多い
・キャリア重視の傾向

② ライフスタイル軸

・仕事とプライベートのバランスを重視
・美容や健康への高い関心
・フィットネス、ヨガ、カフェ巡りを趣味とする
・SNSを活用した情報収集・発信
・地域コミュニティとの繋がりを重視

③ 心理軸

・強い自立心
・社会問題(環境、ジェンダー平等)への高い意識
・将来への不安と経済的安定の重視
・自分らしい生き方の模索
・理想と現実のギャップに対する認識

さらに、「ペルソナとしてパン食に関するニーズについて書き加えてください。」と追加して質問をすると下記のような具体的なニーズを出力してくれます。

(ウ) パン食に関する具体的ニーズ

・健康志向:全粒粉や低糖質パンなど、栄養価の高い選択肢を求める傾向
・視覚的魅力:インスタグラムなどSNSでシェアできるようなオシャレなパンへの関心
・利便性:忙しい日常生活の中で手軽に食べられる朝食や軽食としての活用
・アレンジ性:自宅で簡単にアレンジできるレシピや新しいトレンド(例:スムージーと組み合わせた朝食)への興味
・社交性:地元のベーカリーやカフェで友人と一緒に新しいパンを試すことを楽しむ傾向

このペルソナをAIに入力し質問することで、より具体的なアイディアを引き出すことができます。
後は、地域性や当社の強みを掛け合わせて、チャレンジする領域を絞り込んでいけば良いでしょう。

5 AIペルソナに基づく商品開発例

AIにペルソナ像を読み込ませ、このターゲット顧客を対象とした質問を投げかけることができます。
その回答例の一部として新メニュー開発の例をご覧ください。

(ア) 商品ライン展開

MORNING BOOST シリーズ

① スーパーフードブレッド (368円)

・粒粉生地にチアシード、キヌア、アマニを練り込み
・スライス済みで冷凍保存可能
・糖質量を明記し、健康意識に対応

② レインボーベーグル (298円)

・天然素材で着色したインスタ映え商品
・低糖質・高タンパク質で健康志向に対応
・デザイン性の高い包装

LOCAL TREASURE シリーズ

③ 糸島野菜のフォカッチャ (458円)

・地元食材の活用
・オーガニック小麦使用
・生産者情報の提供

このように色々とアイディアを提供してくれます。

6 まとめ

AIを活用したペルソナ分析は、従来の手法と比べてより深い顧客理解と効率的な商品開発を可能にします。
本記事で紹介した事例のように、AIツールを活用することで、マーケティング戦略の精度を高め、より効果的なビジネス展開が期待できます。

今後の展望として下記のようなことが考えられます。

・AIツールの進化による分析精度の向上
・リアルタイムデータ活用の可能性
・パーソナライゼーションの深化
・新たなマーケティング手法の登場

今後も、AIツールの発展により、よりきめ細かなマーケティング施策の立案が可能になると考えられます。
重要なのは、AIを単なるツールとして捉えるのではなく、人間の創造性や直感と組み合わせて活用していくことです。

※本記事で紹介したAIツールや分析手法は、2024年10月時点の情報です。




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