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第29回 企業経営と商標権
2025年02月22日
投稿者:野上 育彦
企業経営と商標権「登録商標」という言葉を耳にしたことはあると思いますが、自社には関係がないと考えていませんか?企業経営において商標権を意識しておかないと大きなリスクとなる可能性もあります。
知的財産活用の重要性私は中小企業診断士として企業の経営支援を行うとともに、知的財産アナリストの資格を取得し、知的財産を経営に活かすサポートも提供しています。
かつて、福岡県知財総合支援窓口のアドバイザーとして、県内の中小企業を訪問し知的財産の活用支援を行っていました。
しかし、知的財産や商標権について「うちには関係ない」と考えている経営者も多くいらっしゃいました。
商標権とは何か商標権とは、簡単に言えば「自社の商品やサービスの名称やロゴを保護する権利」です。
商標には、企業が使用するロゴや商品名などが含まれ、それを保護するために商標権が存在します。他社に商標を模倣されたり、無断で使用されたりすると、自社のブランド価値が損なわれ、消費者が誤って他社の商品を購入する可能性もあります。
例えば、こだわり抜いた自社商品を開発し、順調に売上を伸ばしていたとしても、商標登録していなければ、ある日突然、商標権を持つ企業から「その商標は当社のものなので使用しないでください」と警告を受ける可能性があります。
実際に、久留米市周辺の企業でも商標権の問題により店舗名を変更せざるを得なくなり、看板の作り直しなど多大な経済的負担や顧客の混乱を招いた事例があります。
商標権の種類商標権にはさまざまな種類があり、保護対象となる範囲も異なります。代表的なものとして、以下のような種類が挙げられます。
1.
文字商標:企業名や商品名など、文字のみで構成された商標。
2.
図形商標:ロゴやシンボルマークなど、デザインによって識別される商標。
3.
文字+図形商標:文字と図形が組み合わさった商標。
4.
音商標:企業のジングルや特定のメロディーなど、音によって識別される商標。
5.
動き商標:動画やアニメーションのように、動きによって識別される商標。
6.
ホログラム商標:ホログラムによる視覚的な変化を伴う商標。
7.
色彩のみからなる商標:特定の色彩がブランドの識別要素となる商標。
これらの商標のうち、自社のブランド価値を守るために必要なものを適切に選択し、登録を検討することが重要です。
商標権を取得するメリット商標権を取得することで、企業は以下のようなメリットを得られます。
1. 独占的な使用権の確保商標権を取得すると、同じ商品やサービスにおいて、他社は同じ商標を使用できなくなります。仮に他社が使用している場合、その使用を中止させることや損害賠償を請求することも可能です。
2. 長期的なブランド保護商標権は10年間有効ですが、更新を続けることで半永久的に保護することができます。特に近年は中小企業においてもブランディングの重要性が増しています。商標登録を行うことで、商品やサービスの認知度や信用を長期的に維持することができます。
3. 企業価値の向上商標を登録し、ブランド力を確立することで、企業の価値向上につながります。商標は企業の知的財産としての資産価値を持つため、将来的に企業の競争力を高める要素の一つとなります。
商標権は「早い者勝ち」商標権は「早い者勝ち」と言われています。自社の商品やサービスの商標登録を行っていない場合、後から他社が出願すると、原則としてその商標は他社のものとして登録されてしまいます。
その結果、長年培ったブランドが使用できなくなる可能性もあるため、商標登録は早めに行うことをお勧めします。
商標登録前の注意点商標登録を行う際には、事前に他社の商標と類似していないかを確認することが重要です。
他社がすでに同一または類似の商標を権利化している場合、出願しても登録が認められない可能性があります。
商標の類似性を判断する基準には以下の3点があります。
・ 見た目
・ 読み方
・ 意味
これらの要素を比較し、他社の商標と混同される可能性がないか慎重に調査することが求められます。
商標調査には専門的な知識が必要ですが、特許庁関連団体が提供する無料の検索ツールを活用することができます。
ただし、初心者が独自に調査するのは難しいため、弁理士などの専門家に相談するのも一つの方法です。
また、福岡県知財総合支援窓口で無料相談ができます。
久留米市では宮ノ陣の久留米ビジネスプラザで対面相談が可能なほか、オンライン相談も実施されています。まずは電話で問い合わせることをお勧めします。
※ 検索ツール
独立行政法人工業所有権総合情報館「J-PlatPat」:
https://www.j-platpat.inpit.go.jp/※ 相談窓口
INPIT福岡県知財総合支援窓口:
https://chizai-portal.inpit.go.jp/madoguchi/fukuoka/まとめ商標権は企業の大切な資産です。適切に商標登録を行うことで、自社のブランドを長期的に保護し、競争力を維持することが可能になります。
商品やサービスの名称等を考える際には、今回の話を思い出してもらえると幸いです。