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第30回 言語化しよう


2025年02月26日

投稿者:梅﨑 実

以心伝心、阿吽の呼吸。
共感、共鳴、共調。
どれも言語を使わずに相手と気持ちや想いが通じ合うことを指す言葉です。

言わなくても分かってもらえる。
話さなくても通じ合えるというのは、理想的な関係に思えるかもしれません。
しかし、企業経営においては少々リスキーな考え方です。

日ごろ、様々な経営者の方とお話しをしますが、
「自分の考えを従業員や利害関係者にハッキリ示さない」
「考えていることを理解してもらおうとせず、一方的に指示をするだけ」
「理由や意図の説明をせず、命令だけする」
とタイプの経営者は少なくありません。

考えていることを整理して言葉にするのが苦手だったり、説明が面倒だったりという理由もありますが、なかには「わざわざ言わなくても、うちの従業員は分かってくれている」と思っている経営者もいます。

しかし、経営者が思うほど、従業員は経営者の考えを理解していません。
考えを整理し、言葉にして伝えられるようにしておかなければ、いつの間にか従業員がそっぽを向いてしまうこともあり得ます。

例えば、以前こんなことがありました。
熱意があり、行動力も豊富な社長の企業の例です。

その企業は創業時から順調に事業が成長していました。
経営状況や社会環境から、その会社は今後ますます成長することは確実。
にもかかわらず、ある時期から従業員がどんどん辞めるようになり、事業成長に急ブレーキがかかってしまいました。

なぜ成長している企業から人がどんどん離れていったのか。
その理由の一つに、社長の説明不足がありました。

「近い将来、事業をどう成長させたいのか」
「それによって顧客や従業員にどんな良い変化が起こるのか」
「そのためにどんな誰がいつ、取り組みをするのか」
などを丁寧に説明していませんでした。
その社長はコミュニケーションが得意ではなかったこともあって、従業員に説明する手間を省き、矢継ぎ早に指示だけを出していました。

指示を受けた従業員は
「なんでこの業務をしなきゃいけないんだろう?」
「この仕事のどんな意味があるんだろう?」
「この会社はこれからどうなるんだろう?」
など、分からないことだらけのなかで仕事をすることになります。

その結果
「先が見えない」
「将来どうなるか分からない」
といって辞めていったのです。
せっかく事業が成長軌道に乗っていたのに、ブレーキがかかるのはもったいないですよね。

経営者の考えを言葉にするメリットはたくさんあります。
主なものを3点、ご紹介します。

1.意思決定の質が向上する
考えていることを整理し、言語化すると、意思決定の質が向上します。

頭の中だけで考えている場合、いろいろ考えているようで実は同じ思考を堂々巡りしているだけだったり、同じような視点で考えてばかりになることが少なくありません。

しかし考えていることを言葉にして書き出したりすると、自分の考えを客観的に見ることができるようになります。

考えていることを整理し、誰かに話したり紙に書いたりすることで、まるで他人の話を聞いているかのように、冷静で客観的に見直すことができるのです。
すると、頭の中だけで考えていた時とは違う視点が手に入ったり、新たな改善点に気づくことがあります。
そうなれば意思決定の質は向上します。

2.コミュニケーションが円滑になる

経営者が自分の考えや価値観、将来ビジョンを明確に言語化することは、従業員や利害関係者とのコミュニケーションを行う上で不可欠です。
ビジョンや目標を言葉にし、丁寧に説明することで、従業員は
「会社はどこを目指しているのか」
「この仕事の意義は何か」
などを理解しやすくなります。

また、考えをきちんと言語化することで誤解や理解不足によるトラブルも防止できます。
例えば「この仕事、早めにやっておいて」と伝えるよりも、「今日中にやっておいて」と期限を言語化して伝えるほうが、理解が明確になり誤解を生まなくて済みます。

3.組織の雰囲気が良くなる
価値観を共有することで一体感のある組織になりますし、同じ目標を共有することで組織が一丸となって目標達成に取り組む姿勢が生まれます。
目標が共有されていれば、従業員もその目標に向かって何をすれば良いか考えてくれるようになります。
その意見を吸い上げ、経営に生かすことができれば風通しが良く、働きやすい職場づくりに繋がります。

また、自社が大切にしている価値観を言語化し、外部に発信することで、自社の価値観に共感する人を採用するチャンスも生まれます。

以前、私が経営していた調剤薬局が人手不足に陥ったことがあります。
とにかく人手が必要だったので、最初は求人に応募してくれた方のなかから、比較的良さそうな人を選んで採用していました。
しかし当社の価値観に合わない人が応募してくることが多く、入社してもらってもすぐ辞められることが1年近く続きました。

そこで募集要項の内容や構成を見直し、経営理念の説明や私たちが大切にしている価値観、それに基づいてどんな取り組みをしているかをしっかり説明するようにしました。
すると、その価値観や仕事内容に共感してくれる人が応募してくるようになりました。
そのようにして採用したスタッフは、その後5年間、誰一人辞めませんでした。

このように価値観などを言語化して発信することで、人材採用や組織文化にも良い影響があります。
経営者としての考えを明確にして、従業員に伝えるのは、経営に大きな影響を及ぼします。
ぜひあなたの考えていることを言葉にして、丁寧に説明するようにしてください。




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