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第35回 【プロセスアプローチ】
2025年08月21日
投稿者:髙嶋 好夫
1.プロセスアプローチとは
これまでQCストーリー、管理のサイクル(PDCA)、顧客満足の説明を行ってきました。
問題の設定と解決の考え方、PDCAによる改善、お店や会社の価値判断の基準の順番で、QCストーリーに沿って、PDCAを回しながら、お客様が満足する製品やサービスを提供することがお店や会社の繁栄につながるという説明をしたものです。
それでは、お客様が望むものをきちんと提供する、別の言い方をすれば、お客様が望む品質(仕様だけでなく、価格や納期も含む広義の品質です)を維持向上させるためには、自分たちの活動をどのように把握し、どのように改善したらよいでしょうか。
ここにプロセスアプローチという考え方がでてきます。
プロセスアプローチは品質マネジメントシステム(※)の規格であるISO9000シリーズ(用語解説の9000、要求事項の9001などで構成されます。以下ISO9000とします)の重要な考え方です。
ISO9000の中で細かい定義や品質マネジメントのやり方が決められています。
ここでは、はじめてこの言葉を聞く方を想定して考え方を説明いたします。
※品質マネジメントシステムの定義はISO9000の3.5.3、3.5.4に記述がありますが、ここでは素朴に「品質を達成する仕組み」と考えてください。
プロセスアプローチとは、お客様に製品やサービスを提供する品質マネジメントシステムを、個々のプロセスの集まりとして認識し、プロセスの相互関係を把握して、プロセス全体をシステムとして管理運用することを言います。
この考え方のメリットは、システムを管理し易い大きさのプロセスに分解して、個々のプロセスの機能を明確にして機能の向上をはかり、さらにシステム全体をひとつながりのプロセスとして把握することで、部分最適に陥ることなく全体の最適化を目指して、システム全体の継続的改善を行うことができる点です。
製造業を例にとると、図1のように描くことができます。
製品の提供プロセスは、営業、設計、製造、包装出荷のプロセスから構成され、各プロセスは前のプロセスから「もの」と「情報」をインプットとして受け、プロセス内でお客様の期待や要求に沿った製品に近づけて、アウトプットを次のプロセスに送ります。
次のプロセスにとってはこれがインプットになります。
最終的には製品の提供プロセスから製品や仕様書がお客様へアウトプットとして提供されます。

図1 製造業の一般的なプロセス構成図
2.プロセスとタートル図
製品の提供プロセスは営業プロセスや製造プロセスなどから構成されています。
それでは、個々のプロセスを具体的にどのように認識したらよいでしょうか。
プロセスを具体的に把握するのに便利なツールがタートル図です。図2に製造プロセスのタートル図を示します。
ちょうど亀(タートル)を上から見たように、中央の甲羅に頭、尻尾、4本の手足がついたように見えることからタートル図という名前になりました。

図2 製造プロセスのタートル図
製造プロセスの場合、Inputとして情報(設計図、材料記録など)および材料(Material)、これにプロセスを構成する機械(Machine)、人員(Man)、方法(Method)を合わせた4M、さらにプロセスや品質の評価方法(Measure)を加えた5Mにより製造プロセスが実行され、製品・サービスがアウトプットとして出てくることがわかります。
営業プロセスや設計プロセスも形のある材料以外のInputと残りの4Mでプロセスが実行され、アウトプットが出てきます。これらのプロセスひとつひとつについて、アウトプットが仕様を満たしているかの評価、プロセスが目標とするパフォーマンスを達成しているかの評価を行い、不足があれば改善を行うPDCAを回していくことになります。
3.プロセスアプローチによる継続的な改善
ISO9000では、継続的改善という大切な考え方があります。
品質マネジメントシステムは一度作ってしまえば終わりではなく、品質を維持し、不良率を下げ、原価を低減し、顧客満足度を上げるために、継続的に改善していくことが求められます。
図2のタートル図に基づいて、ひとつひとつのプロセスについてPDCAを回して改善を行っていく、それを踏まえて図1のように製品提供プロセス全体(別の言い方をすれば会社全体)でもPDCAを回した継続的改善を行うことで、顧客満足度が上がり、結果的にお店や会社の繁栄につながっていくということです。
冒頭の説明の繰り返しになりますが、QCストーリーによる現場の問題解決、PDCAによる業務内容の向上、顧客満足が繁栄の大本、プロセスアプローチによる継続的改善で顧客満足の向上、と一連の流れで顧客満足による業績向上について考え方を説明しました。
次回からは、会計手法を使った業績改善を考えていきたいと思います。
参考図書
廣瀬春樹ほか,「実践 プロセスアプローチタートルチャートの活用」,日科技連,2017年.