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第３７回　「人的資本経営」が未来をつくる ～従業員の力を引き出す、ちょっとした工夫から～

2025年12月05日

投稿者：豊福　滋信

近年、新聞やビジネス誌でも「人的資本経営」という言葉を目にする機会が増えてきました。
上場企業への情報開示義務化などがきっかけで注目されましたが、「当社には関係ない」と感じている方も多いかもしれません。
しかし、人手不足が続き、採用も定着も難しくなっている今、「人的資本経営」は従業員を抱える全ての企業にとって必要な考え方だと言えます。限られた人員の中では、従業員一人ひとりのスキルや意欲が企業としての成果に直結するためです。

人的資本経営とは？

人的資本経営とは、「人材を企業にとっての重要な資産と捉え、その価値を高めることで企業の成長に結びつけていく」という考え方です。
従業員がもつスキルや経験はもちろん、仕事への意欲や姿勢も含めて“資本”と考えます。設備やお金と違い、人的資本は育てれば育てるほど伸び、その伸びが企業の成長に還元されるという特徴があります。

従業員が働きがいを感じ、高い意欲で自分の能力を活かせる環境が整えば、業務の質や生産性が向上し、顧客からの評価が高まるとともに売上や収益が増えます。
そして、得られた収益の一部をまた人的資本に投資することで、企業全体が前向きなサイクルに入っていきます。従業員の成長を企業の成長につなげるという好循環を生み出す――これが人的資本経営の本質です。

当社でもできる！人的資本経営の取り組み事例？

好循環の一歩を踏み出すために具体的にどのようなことをすればいいでしょうか。ここではイメージしやすいよう、様々な企業が取り入れて成果につながった取組みを目的別に紹介します。すぐに始められるものばかりです。

① 従業員の定着・職場の雰囲気づくり

■ ありがとうカード制度
従業員同士が日頃の感謝や気づきをカードで伝える仕組みです。
小さな取り組みですが、社内のコミュニケーションが活発になり、職場の空気が自然と明るくなります。社内表彰と組み合わせることで、離職率の低下につながった事例もあります。

■ キャリア面談の導入
年に1回でも、上司と部下がじっくり向き合う時間をつくることはとても重要です。
今の仕事の悩みや将来の希望を共有・対話することで、従業員は「自分の強みを見てくれている」「成長を期待してくれている」という安心感を得られます。モチベーションの向上だけでなく、早期離職の防止にも効果があります。

② 人材育成・スキルアップ

■ 社内研修の工夫
外部講師に依頼する方法もありますが、社内のベテランを講師にすることで、より現場に即した知識を若手へ引き継ぐことができます。
ベテランの責任感やモチベーション向上につながるだけでなく、若手の成長スピードが上がり、戦力化が早まります。

■ 資格取得支援
資格取得にかかる費用の一部を企業が負担する取り組みです。
従業員は挑戦しやすくなり、企業としてもスキルの底上げができるため、双方にメリットがあります。スキルを持つ従業員が増えることで、業務品質の向上につながります。

③ 働きやすさ・多様な働き方への対応

■ 柔軟な勤務制度
時差出勤や在宅勤務を部分的に取り入れる企業が増えています。
まずは試験導入で「週1回の在宅勤務」など小さく始める企業も多く、育児・介護中の従業員の継続雇用に大きな効果があります。働きやすさが向上することで、生産性アップや定着率改善に貢献します。

■ 副業の容認
従業員の成長やモチベーション維持のため、条件付きで副業を許可する取組みです。
外部の経験が本業に良い刺激を与え、新たな視点やスキルを持ち帰ってくれるケースもあります。結果として社内の活性化やスキルの底上げにつながります。

④ 業務効率化・残業抑制の取組み

■ DXの推進
勤怠管理や経費精算、作業指示書、日報など、紙ベースで行っていた事務業務をクラウドツールに一本化するだけでも、業務効率は大きく変わります。
事務作業が減れば従業員の負担が軽くなり、本来の業務に集中できます。平均残業時間が月10時間以上減少したという事例もあります。

■ 業務フローの見直し
従業員と一緒に「この作業、本当に必要？」という視点で業務を棚卸しする取り組みです。
ムダをなくし生産性を高めることで、時間の余裕が生まれ、従業員と企業双方にメリットがあります。

最後に

人的資本経営の第一歩に、特別な投資や制度は必要ありません。
「従業員を大切にする」「一人ひとりの成長を応援する」――こうした姿勢のもと、小さな工夫を積み重ねていくことが大切です。

従業員がいきいきと働ける企業は、お客様から選ばれる企業でもあります。
まずはできるところから、無理なく始めてみませんか？

我々経営支援ネットワークは、こうした取組みを全力で後押しします。「何から手をつければよいかわからない」「自社に合う方法を一緒に考えてほしい」など、ぜひお気軽にご相談ください！

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