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第41回 生成AI時代の「著作権」新常識
2026年06月22日
投稿者:野上 育彦
【ポイント】
・「学習段階」と「生成・利用段階」では適用されるルールが異なる。
・AI生成物であっても、既存の著作物との「類似性」と「依拠性」があれば著作権侵害になる。
・AIは「代替」ではなく「経営を支える道具」として使う視点が重要。
・AI活用では、最終的な確認と判断を人が行うことが不可欠。
「これ、使っていいのかな?」
ChatGPTや画像生成AIの普及により、中小企業の現場でも、文章作成、チラシ制作、SNS投稿、企画書作成などにAIを活用する場面が急速に増えています。
人手不足や業務効率化への対応が求められる中、AIは非常に強力な支援ツールになりつつあります。
一方で、経営者からは次のような相談も増えています。
「AIで作った画像は自由に使っていいのか?」
「知らないうちに著作権侵害にならないか?」
「AIで作った文章に権利はあるのか?」
便利さの一方で、法的リスクへの不安も広がっているのです。
特に中小企業では、専任の法務担当者を置いていないケースも多く、「知らずに使ってしまった」が、そのままトラブルにつながる可能性もあります。
そこで今回は、文化庁の考え方をもとに、経営者として最低限押さえておきたい「AIと著作権」のポイントを整理します。
混同しやすい「二つのフェーズ」
AIと著作権を理解するうえで最も重要なのは、「AIの学習」と「AIの利用」を分けて考えることです。
日本の著作権法では、AIが大量の文章や画像を読み込み学習する「学習段階」については、一定条件のもとで認められています。
これは、AIが作品を“鑑賞”するのではなく、情報解析として利用しているという考え方によるものです。
一方、AIが生成した文章や画像を、実際にチラシやWebサイト、SNS広告などで利用する「生成・利用段階」では、従来と同じ著作権法の考え方が適用されます。
つまり、「AIが作ったから自由に使える」というわけではありません。
著作権侵害になる「二つの条件」
AI生成物が著作権侵害になるかどうかは、主に次の二つで判断されます。
①類似性既存の著作物(文章・イラスト・写真など)と表現が似ていること。
②依拠性既存作品を参考に生成したと認められること。
例えば、有名キャラクターに酷似した画像や、特定作家の作風を強く模倣した生成物などは、問題になる可能性があります。
最近では、「○○風の画像を作って」とAIに指示する使い方も増えていますが、企業利用では特に注意が必要です。
AIは「完成品」ではなく「たたき台」
では、中小企業はAIをどのように使えばよいのでしょうか。
重要なのは、
「AI任せにしないこと」です。
例えば、
・AIで作成した文章を自社向けに修正する
・画像に独自のデザインやコピーを加える
・実際の顧客の声や現場感を追加する
といったように、人の手で内容を調整し、「自社らしさ」を加えることが重要です。
AIは非常に優秀ですが、あくまで“素材”や“たたき台”として活用し、最終的な判断と責任は人が持つ。この姿勢が、リスク回避と品質向上の両方につながります。
中小企業こそAI活用の恩恵は大きい
AIというと、大企業向けの高度な技術のように感じるかもしれません。しかし実際には、人手や予算が限られる中小企業ほど、AI活用の効果は大きいと言えます。
例えば、
・SNS投稿の下書き
・商品説明文の作成
・チラシ構成案
・企画アイデア出し
・議事録整理
など、日常業務の効率化には非常に有効です。
一方で、AIに依存しすぎると、「どの会社も似たような発信になる」という問題も起こります。
だからこそ、最後に必要なのは「その会社らしさ」です。
地域性、現場感、経営者の想い、顧客との関係性――。こうした部分は、まだAIだけでは作れません。
まとめ
AIは、今後の経営において避けて通れない存在になっていくでしょう。
重要なのは、「AIを使うか使わないか」ではなく、
「どう使いこなすか」です。AIは魔法の杖ではありません。しかし、正しく理解し、適切に活用すれば、中小企業にとって非常に強力な経営支援ツールになります。
「リスクを正しく理解し、賢く使う」
その姿勢こそが、生成AI時代における企業の競争力につながっていくのではないでしょうか。
参考文献 ・文化庁「AIと著作権に関する考え方について(令和6年3月)」
・文化庁「令和5年度著作権セミナー AIと著作権」
・文化庁公式YouTube「AIと著作権」解説動画