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第43回 管理会計の目的と意義
2026年08月20日
投稿者:髙嶋 好夫
【管理会計の本質は、コミュニケーションと「見える化、考える化、行動化」】
1.管理会計の位置づけ、「財務会計」と「管理会計」
どこかで聞いたような気はするけれど、なんだかがんじがらめに管理されそうでいやだなと思っていませんか。
会計とは、個人事業主であれば年に一回確定申告のときにやるもの、会社であっても月々の試算表の最後の行を見て黒字か赤字か確認するものという程度で、会計の中に種類まであるなんてますます面倒と思う方にこそ、この記事をぜひ読んでいただきたいと考えます。
会計は大きく分けて財務会計と管理会計があります。
財務会計は企業外部の利害関係者、例えば投資家や金融機関に企業の財務状態や経営成績の情報を提供するもの、管理会計は会計情報を経営者や社員が意思決定や業績評価に内部的に利用するものと会計の教科書には書いてあります。
ここのところを少し説明しておきます。
財務会計は外部の人に情報提供するので、各社ばらばらでは比較ができません。
そこで、一定のルールに従って財務諸表が作成されています。
また、財務会計の結果は、利益配分の根拠にもなります。
利害関係者のひとつである日本国政府に対しては納税という形で利益配分をしなければなりません。
だから、不公平にならないように細かい決まりがあり、その通りに処理する必要があります。
そして、すでに終わった会計期間について集計するので「過去を対象とする会計」でもあります。
一方、管理会計は、大きなところでは、新しい事業に取組むときや設備を更新するとき、日常的な業務では原価割れの引合いを受けるかどうかなど、会計データを踏まえたうえで会社の現状と将来を見越して意思決定する「未来を扱う会計」です。
また、業績評価では、単に今日までの集計をするのではなく、計画を立て、実績と計画を比較し、乖離があれば原因を考え、計画達成のために手を打つという「見える化、考える化、行動化のための会計」でもあります。
管理会計では、会計情報を企業の内部で利用するので、財務会計のような決まりはありません。
自分たちがわかりやすいように、自由に集計してよいのです。
ただ、基準がなにもないと実務的にやりにくいので、今までの歴史と経験を反映した標準的な方法があります。
どうしても大企業の事例が多いので、中小企業では自分たちにあったやり方を模索する必要があります。
率直に言えば、目的と必要に応じて手を抜けるところは手を抜くということです。
管理会計は、はじめはむずかしくてとっつきが悪そうに見えても、実は会計データを通じて経営者や社員のコミュニケーションを進め、「見える化、考える化、行動化」で業績向上を目指す有力なツールです。
少々面倒でも使わない手はありません。
2.管理会計の目的と効果
管理会計は会計データを使って、意思決定に役立つ情報を提供します。前に記したように「意思決定」と「業績評価」が主な目的になります。
設備投資であれば、設備の価格、売上見込み、減価償却や人件費といった費用の見積もりを基礎にして、設備投資額を回収するのに必要な期間、あるいは、将来入ってくる現金の価値と設備投資額の比較、または将来入ってくる現金が設備投資額に対してどれぐらいの利回りになるか、などの指標を計算します。
複数の設備投資案を、これらの指標で比較して、もっとも有利な案を採用するということです。
長年会社を経営している社長さんであれば「勘と経験と度胸」でも大きく誤ることはないでしょう。
しかし、「勘違い」という言葉もあります。データで裏付けられた意思決定であれば、より的確な判断が下せます。
業績評価では、まず予算を作成し、予算と実績を対比して(予実管理と言います)、乖離があれば手を打つという、計画(Plan)、実行(Do)、評価(Check)、改善(Action)の「PDCAサイクル」を回して、予算を確実に達成していくのが目的になります。
さらに、予算はお金を物差しにした会社の計画ですから、自然に社長の将来に対する気持ちが見えてきます。
社長と社員が現状と将来を共有して、次に説明する「見える化、考える化、行動化」を通じて、ありたい将来を実現することが、管理会計の目的と効果になります。
3.管理会計の本質はコミュニケーションを通じた「見える化、考える化、行動化」
管理会計は経営者だけのものではありません。
ある品目が単価いくらでいくつ売れたというデータを、毎月毎月、一覧表にしていきます。
この表を見ながら関係者で話し合うと、売り場の担当者から、この商品はテレビで取り上げられたからこの時点で増えたとか、この商品は修学旅行客が買っていたが、最近修学旅行客そのものが減ったとか、一線で業務に携わっている人だからこそわかる情報が出てきます。
経営者と社員のコミュニケーションが始まります。
そうなれば、商品別の売上一覧表を作った(見える化)ことで、売上が増えた減ったの原因を社員が考えるようになり(考える化)、売上を増やすには何をしたらよいか議論になって、こうしようと決まればみんなで実行(行動化)して、業績向上につながっていきます。
大切なのは、品目ごとの売上一覧表という現場データを、少々手間をかけてでも毎月作成し、このデータをみんなで共有することです。
それで初めて、経営者と社員のコミュニケーションが始まり、「見える化、考える化、行動化」のプロセスが動きだすのです。
データでこのプロセスを動かすことが、管理会計の本質なのです。
管理会計は、がんじがらめの小難しいものでなく、みんなが一体となって業績向上を目指すコミュニケーションの有力なツールです。
ぜひうまく使いこなしてください。
次回以降で、売上管理、原価計算、在庫管理と資金管理という流れで管理会計の手法を順次説明していきます。
参考図書
篠田朝也、藤本康男,「中小企業のための管理会計 理論と実践」,東京図書出版,2019年
管理会計を根付かせる鍵は現場データ収集の仕組みであり、管理会計は会計データを通じたコミュニケーションツール、「見える化、考える化、行動化」のサイクルを回すのが管理会計の本質と説きます。私が共感している本です。姉妹編に「中小企業のための管理会計コンサルティング 実務と事例」があります。
千賀秀信,「この一冊ですべてわかる 管理会計の基本」,日本実業出版社,2011年
まえがきに、管理会計の勉強をはじめる人のために、「管理会計はこのような順番で勉強してください」という体系と方向性を示したい、基礎固めの入門書として役立てもらいたいと記してあります。初心者むけに具体的な例を入れながら体系的に書かれた本です。
「サイバー攻撃なんて、大企業の話でしょう」。
そう思われた経営者の方も、少なくないかもしれません。ところが今は、むしろ逆になっています。
攻撃の狙いは、はっきりと中小企業へと移ってきました。
今回は、記憶に新しい大企業の被害事例を入り口に、規模の小さな会社こそ知っておきたい「今すぐできる備え」を、できるだけやさしくお伝えします。