経営のヒント
経営改善、経営革新、IT導入、事業承継、起業、補助金など
様々なステージにおける経営に関する情報をお届けします
経営のヒントTOP経営改善(
7) 経営革新(
6) 新規創業(
3) IT導入(
2) 資金繰り(
2) 補助金(
0) 事業承継(
1) 設備投資(
0) 販路開拓(
1) その他(
13)
第5回 販売計画とウェザーマーチャンダイジング
2023年07月13日
投稿者:今井 武史
野菜の価格が高騰するともやしが売れる。長年の経験の蓄積よりスーパーマーケットでは常識となっている。昨年後半から、野菜価格の高騰に伴い、もやしを欠品している店をよく見かけた。自動発注に頼り切った結果か、ノウハウの欠落かは不明だが、私が指導している店舗でも欠品をおこしていた。
「販売計画を立てる」ということは希望的観測であってはならない。できる限り正確に需要を予測しなければならない。できなければ、見切りや廃棄といったロスを発生させることとなる。長期的な計画では曜日回り、チラシの立ち日、二十四節季や催事等を計画に反映させる。
短期的な計画は発注ベースで行う。この時、天気は重要なファクターとなる。天気を販売計画に反映させることをウェザーマーチャンダイジングという。店長時代の私のルーティンには天気予報のチェックが入っていた。私の店舗の場合、小雨が降ると来店客数は3%減少する。本降りになると3割減である。それを見越して発注しなければならない。客数の減少割合に関しては店舗の立地環境や顧客の移動手段などによって左右される部分があるため、店舗ごとに確認する必要がある。大切なのは自分の店にどのような影響が出るのかを「知っている」ことである。
特に日付の短い日配品は注意を要した。日配品の場合、主要商品は単品管理を行っていた。具体的には入(仕入数)・出(売れ数)・残(翌日の残数)管理である。日々、入・出・残を管理しながら、気温と天気を書き込む。これにより、主力商品の日々の売れ方、季節ごとの波動、天候や気温による影響を実感して、体得する。
気温も販売計画に影響する。最高気温25℃~30℃、これがアイスクリームの売り頃である。最高気温が25℃を超えるとアイスクリームの売上が爆発的に伸びる。一方、アイスクリームを食べるとのどが渇くため、最高気温が30℃を超えると逆にアイスクリームの売上は落ちる。代わって売上が伸びるのが氷菓(かき氷)である。よって、売場においては最高気温が25度を超え始める一週間ほど前から冷凍食品(主にうどん類など冬時期の拡販商材)を縮め、アイスクリームを拡大する。最高気温が30度を超える一週間ほど前からアイスクリームを若干縮め、氷菓を拡大する。その後、夏休みに入るころを目途にアイスクリーム、かき氷とも最大拡販体制に入るのである。(※弁当需要が減るため、弁当商材を縮小)
また、夏場は総菜コーナーの揚げ物が良く売れる。半加工品や冷凍食品の揚げ物はそう変わらない。夏場に台所で揚げ物を揚げたくないという消費者が一定程度おられる。こういった消費者の方は完成品を購買し、レンジで加熱するのである。
このような商材は昇温期だけでなく、降温期にも存在する。意外に思われる方もおられるかもしれないが、最低気温が25℃を下回ったタイミングで一旦おでんが売れる。昔はお盆明けから、おでん商材を展開していた。温暖化の影響から、私の現役最後頃で9月頭にずれ込んでいたように記憶する。その後、コンビニおでんの拡販により、スーパーマーケットのおでん商材は大幅に売り上げを落とした。
晴天型商品(行楽用品、日焼け止めなど)、雨天型商品(傘、長靴など)、異常気象型商品(非常食、ミネラルウォーター、乾電池など)等もあり、天気予報により商品の展開場所も含め考慮する必要がある。
話はそれるが、年末・年始やお盆のような全国共通の催事も大切だが、地域情報の収集にも力を入れる必要がある。地域の学校で運動会が開催される場合、ウズラの卵は通常の十数倍仕入れていないと、開店直後に欠品してしまう。(※昨今は水煮で代用する向きも見られる)欠品すると、他のスーパーマーケットにその日の売上を取られることとなる。また、スタッフに協力してもらい、近隣の学校の給食の献立表を毎月入手し、事務室に貼り出しておいた。給食と晩御飯を被らせたくないという親御さんは多いのではないだろうか、という配慮のもと、献立表を参考にインストアプロモーションを打ち出すよう、各部門に指導を行っていた。
特に食品を扱う業界では、ロスのコントロールがそのまま収益に直結する。繰り返しとなるが販売計画は希望的観測であってはならない。そのためには、曜日回り、チラシの立ち日、二十四節季や催事等を考慮に入れたうえで、販売計画を立て、発注ベースでは天候や地域行事等を考慮に入れて予測を行うことが重要となる。